二千三百五十五年

"Making peace to build our future, Strong, united, working 'till we fall."

深作清次郎政見放送/文字起こし・解説【2023-02-09】

深作清次郎、1987年

まえがき

 深作清次郎という男の名前を知らぬとしても無理はない。
 明治44年、あるいは1911年の茨城に生まれた深作は、1960年から1987年にかけて専ら無所属、ときには「反ソ決死隊隊長」の肩書で国政選挙を中心にのべ23回の選挙に出馬し、1度として1%以上の票を得なかった。これは熱烈な国粋主義者であり、反共主義者でありながらも、同時期に多数あった右翼団体とは一定の距離を取って一人一党的存在であり続けた、ある意味において典型的なイデオロギストであった深作にとっては当然の結果であったし、深作もそれを──当選を全く望んでいなかったわけでもないと思うが──承知していたはずである。
 では、全くの無名ではないにしても有名人とは言えず、地盤を欠いた深作が、決して安くはない供託金を払って出馬を続けたのは何故なのか?それは演説の機会を得るためだったと思われる。誰でも駄文を全世界に垂れ流せるインターネットもまだ無い時代、それなりには政治に関心のある聴衆に向け、立会演説会や政見放送で政治的なメッセージを広く発信することのできる選挙出馬という手段は、供託金の額を差し引いても魅力的なものだったはずだ。そして深作は、その意味においては、戦後の選挙でもっとも成功した演説者の一人と言ってもよいだろう。
 彼の具体的な経歴と政治性についてはWikipediaに詳しく、それ以上の情報を提示するのも難しいので、これ以上ここでは詳述しない。本稿の主題は彼の演説にこそある。もし深作清次郎という男の名前を知っているとすれば、それも演説のためだろう。彼が30年近くに及ぶ選挙活動の中で行ったであろう演説のほとんどは記録されることなく永遠に消え去ってしまったが、我々にとっては幸いなことに、決して右翼としても主流派とは呼べない彼の数奇な発想と真に迫った話法に心を打たれた21世紀の極右と、おおよそ政見放送には似つかわしくない力強い声で激情的に演説する男の姿にミームとしての価値を見出した海賊的なインターネット・ユーザーによって、いくつかの政見放送の録画・録音がこんにちのインターネット上にアップロードされ、され続けているため、20世紀になされた彼の演説は、少なくともソ連よりは長生きすることになった。
 本稿は、Youtube上に散逸している彼のそういった政見放送無断でまとめ、文字に起こし、2023年の若い読者にもある程度当時のコンテキストが理解できるように適宜注釈を加えたものである。文字起こしは基本的に自力かつ人力で行ったが、4.1と4.2については先行記事を参考にした。
 文字起こしはしたが、ぜひ一度は映像で見て、聞いて欲しい。日本語がこのような情熱と迫力を乗せることはもう二度と無いだろうから。


文字起こし

1(1983年)

www.youtube.com

 石橋政嗣*1君!社会党*2の諸君!世界において、自ら国を守らず、降伏することが、平和で幸福であると言ってる国がどこにある!

 あの!4年間、戦い続ける500万人のイスラム教徒!アフガン人の、あの独立と自由を守る勇気を見よ!*3自分の妻が犯され、嫁入り前のかわいい娘が犯されても、それを!どうぞ、ソ連兵士様強姦してください、そういうことを!石橋君言うつもりか?君は、10年前何と言った?今、津軽海峡ソ連かん、艦隊様がお通りになる。陸上からこれを写真撮影するのはソ連様に対して不敬である!スパイ行為になるからやめなさい。君は、国会において時の総理大臣、外務大臣に言ったではないか。石橋君、君は日本人か?君はソ連の国籍の国会議員か?私は君を、中立・非武装という考え方はソ連に対するおべんちゃらであるとしか思えないんだ。反省したまえ!

 公明党の諸君。あの池田大作*4の、あの10年間共産党と妥協するという声明は何なんだ。あの、女の問題*5で、あの神聖なる法廷を穢してる、最近の、あの事件は何なんだ。日蓮*6さんを看板にして、そして、満天下の、正直なる善男善女を欺いて、創価学会が天下取る、公明党は天下を支配する、ふざけるな!我々日本人は3000年の伝統があるんだ。そういう、公明党のでたらめを、竹入*7君!反省したまえ。

 諸君。自民党のこのザマは何だ!ソ連が、今、目の前にやって来ているというのに、SS-20*8の、あの原爆が、佐渡島に、東京に大阪に落下しようというときに!中曽根*9さんは何と言ってる?三海峡封鎖だ、不沈空母だ、でたらめなことを言いながら、日本に防空壕も掘らず!この!1億人2000万人、ソ連戦車が来たら戦おうではないか!という勇気も示さず、あの、満州の荒野に、南方の島々に、太平洋に日本海に、祖国のために死んでった兵隊さんの、あの凄まじい愛国心なんかを無視して、ひたすらに!ただ、ソ連に対する、レーガン*10と手を握って、それでソ連に対して、大ぼらを吹いていれば、それで自民党のお勤めが務まると思うか!君は本当に国を愛するならば!この!ソ連のSS-20に対抗して、日本を守るために!これは、パーシング2*11を、利尻島に、佐渡島に、隣邦の韓国38度線に、これも、備えて!ソ連というバケモノの、この!アジア侵略!日本侵略を、断固として粉砕しなければならない!中曽根さん、あんた命を懸けて日本を守らなきゃダメだよ!そうしなかったら日本という国が、滅んでしまうんだよ!日本のために、自民党は、心から、命がけで日本の政治の浄化に乗りなさい!


2(1986年)

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 ♪独立守備隊の歌
 ああ満州の大平野
 亜細亜大陸東より
 始まるところ黄海
 波打つ岸に端開き
 蜿蜒北に三百里
 東亜の文化進め行く
 南満州鉄道
 守備の任負う我が部隊

 諸君。諸君はこの満洲独立守備隊の歌をご存知か?あの、満州の荒野の中に、横たえられた、80年前の、日露戦争の、我が先祖の勇戦奮闘の、その堆に横たえられた屍の!そのことをご存知か。諸君。今の日本人が、北から来るソ連の強圧の前に、あるいは北鮮や中共の恫喝の前に、何ら為すこともなく震え上がっている状態は何なんだ!これでも日本人なのか!諸君!我が国がこの大和島根に、国を作って以来3000年、700年前に元軍10万が博多湾に来たときに、これを粉砕したのは!当時の九州男児、鎌倉武士ではないか。80年前の!あの世界最強の、ロシアの陸軍を!旅順に奉天に粉砕し、バルチック艦隊!旅順艦隊を玄界灘に沈めたのは*12、我々日本人ではなかったのか。

 諸君。40年前の負け戦の結果、日本人は!アメリカの7年間の占領下と!ソ連スターリンの謀略により!彼を代行する日本共産党日本社会党!それに!創価学会、彼らまでが、この尻馬に乗って、この、万邦に卓越したところの、この大和民族を、ソ連に従属せしめようとしている!しかも、40年間政権の座にあるところの、この!自民党の体たらくは何なんだ!日本中の、幼い子供たちが、ソ連の手先の日教組*13によって、日本人の本質を失って、そして!親に奉公も忘れ、国家社会に対するところの犠牲心も忘れて、手前勝手に暴走しているようなときに、これが!自民党という天下の権を握ったものは何をしているんだ。諸君。これらは言うならば!毎晩赤坂で芸者買をしている!それに熱中して!この天下を握って、文部省の文政を握ったはずの自民党が、日共や!あるいは社会党や、日本教員組合、彼らによって手玉に取られているんだ。

 諸君。こんなところへ今!ソ連が350台の戦車隊が、我が北方領土から、北海道に侵入しようとしている!ウラジオストクからは、SS-20という、広島の原爆の30倍の威力がある、恐ろしい、原爆ミサイルが日本列島に、170本もこちらを向いてる!こんなときに、一体日本の政治はこれで良いのか。このまま行ったら日本は崩壊しますよ?諸君。我々の先祖が、この3000年間の間に、この国土の、自由と平和と、繁栄を守らんがために、万骨を晒して、日本を守ってきた。これが!この世紀において、崩壊に瀕しているということは、我々、大東亜戦争*14から生き残った、一人の人間として!生き残りの兵隊として!この!戦争に捧げられた、300万の英魂に対しても!我々はじっとしてらんない。我々の精の限り命の限りを尽くして、この日本に覆いかぶさってくるところの、この共産軍の、日本支配という恐ろしい、犯罪行為に対して断固戦わなきゃならんとも考えている。

 諸君。45年前は世界を敵にして日本は敗れた。今は世界を守るものは、アメリカの原爆がある!英国のフランスの、ミサイルがある、西ドイツにイタリア、あらゆる自由を愛する国の軍事力がある。さらに!天の神、地の仏が日本を守ってる。日本人は、堂々と、この!偉大なる3000年の歴史を基にして、日本を守るために、この、命を懸けて立ち上がったならば、日本は必ず守りおおせると思うものである!


3(1987年)

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 ♪橘中佐
 (遼陽城頭夜はたけて
 有明月の)影すごく
 霧立ちこむる高梁の
 中なる塹壕声絶えて
 目醒めがちなる敵兵の
 肝おどろかす秋の風

 諸君。諸君は81年前の、我々の祖先が、あの!共産ソ連の前身、ロシア帝国軍の、100万の大軍を!満州の荒野に粉砕した、この栄光の歴史を覚えているか?バルチック艦隊、旅順艦隊ウラジオ艦隊、五十万を、玄界灘に葬り去ったことを覚えてるか?

 諸君は今、ソ連が来たら降参するという、日本共産党社会党創価学会!このグループはソ連の手先となって、日本が、いずれのときでもソ連が来たら降参しますという、ふざけたことを言うな!無抵抗状態になったならば、我々の!女子供!日本民族の!6000万7000万の幼い女子供を、誰が守るんだ!我々日本人が、しか守る者はないじゃないか。諸君。現在の日本人の腰抜けぶり!中曽根首相は、靖国神社にお参りもしない!大東亜戦争は侵略だと言う!ふざけたことを言うな!日本人がこんにち生きてるのは、81年前の日露戦争の勝利であり、敗れたりとしても!あの神風特攻隊4000機をもって、アメリカの機動部隊を、戦慄せしめた!この、忠勇無双なる、日本の兵隊さん、300万の戦死のおかげなんだ。

 今から10年前、私は東京6区から立候補したことがある。演説が終わって去ろうとする直前に、そこに、共産党不破哲三*15君が来て、私は、不破君!君は日本人と生まれながら、日本人の米を食って育ちながら、何でソ連に魂を売った!君はそれでも日本人として良心の痛みはないのか、恥ずかしくないのか!私は、不破哲三君を大喝した。彼は青くなって、肩をすぼめて黙ってる。しまった。諸君。人間として恥ずべき行為を、これを、臆面もやってのけてるのが、殺人前科一犯の宮本顕治*16や、不破哲三や!社会党や!創価学会を!池田大作や、あるいは民社党*17のバカ者だ!

 諸君。日本を守る者は日本人である。いま日本には、世界の自由と平和と、人権を愛する、あらゆる巨大なる軍事力が、この!平和国日本を守ってくれている。神も仏も日本を守ってくれる。ソ連の脅かしなんかに、何を恐れるんだ!諸君。今から45年前、ノモンハン戦争*18で、我が23師団、第6軍は、あのソ連戦車を、片っ端から焼いて!これを粉砕したんじゃないか!

 諸君。今、弱いもの虐めが流行ってる。税金は払わねぇ、国が滅んでもいい、反税運動が日本を渦巻いてる。これすなわち、ソ連の謀略なんだ。いまの日本人は、腰が抜けて欲が、欲張りで、そして!国家社会に対する犠牲心や、勇敢なるところの正義感らがなくなってる。日本人は世界の物笑いになってる。そうだろう?天皇陛下のお住まい、宮城に、皇太子殿下の東宮御所に、サミットの、集会に、赤軍派*19という国賊が、爆弾を投じても、犯人は捕まらんじゃないか。警察も何をしているんだ!この赤色、暴走赤軍派が、先だって3000人も捕まったけど、刑務所行ったのはたった25人だとか言うんだ。裁判所は何をしてるんだ!暴力を恐れて、そして正義ある判決ができないんだ。だから暴力団もはびこるんだ。こんな日本を、放っておけば、日本は破滅してしまう。日本人は、81年前の、あの明治の精神に立ち返んなきゃ駄目だ。いま企業を襲う右翼が居る。企業という弱いものを虐めて何になるんだ!そんなことよりも、正々堂々と、現在の日本に仇を為す!共産主義勢力!そういう社会主義勢力、これを!撃ち破るのが本当の右翼じゃないのか。そういう意味において、自ら!恥を知れと言いたいんだ!


4.1(1983年)

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※二本立て

 親愛なる、全日本の同胞諸君。諸君は、いま日本に、覆いかぶさっているところの、大なる国難をご存知か。諸君。今、北海道の納沙布*20の彼方!わずか4キロの地点に、350台のソ連戦車が、進撃の姿勢にある!さらには、ウラジオ周辺の、シベリアには、百数十基の!ミサイル!これが、日本の東京大阪を狙ってる。諸君。このような国難に対して、日本人の現在の態度は何なんだ。ソ連が来たら降参すれば事足りる、そんな馬鹿なことが、あっていいのか!

 諸君。自ら守らざる者は滅ぶ、これは千古の金言である。いま日本は経済大国という、虚名に酔いしれて!ソ連が来たら降参すれば、これで事済むという、そういう!デタラメな態度に陥ってる!これは2000年前の、物質文明の極点にあったところのユダヤが!そうした、神を畏れず国を愛さず、そのためについに、国が滅亡し、そして全世界を放浪するような悲惨な民族になってしまったという。

 諸君。今を去るころごろ、78年前!我が大和民族は、あの、強大なるロシア帝国が、満州を侵し、鴨緑江*21を渡って、朝鮮半島に侵入したときに、これ以上は我慢ならんと言って立ち上がったのが日露戦争ではないか。

 諸君。愛国心と言えば、これを、日教組朝日新聞は嘲笑う。しかしながら、愛国心のない民族がどうして!この国を、我々の子孫に伝えることができるか?国を愛することを忘れた大和民族、言うなれば建国以来3000年!最も民族の堕落した時代が今である!

 諸君。誰が戦乱を好むものか。誰が好んで戦争で死ぬものか?それは!お国の一大事であって、涙を呑んで妻を捨て、さいし、親を捨て、兄弟を捨てて、そして、大陸戦線の野末の果てに、あるいは、太平洋の底に消え去ったのだ!諸君。78年前の日露戦争、88年前の日清戦争、我々、大和民族が、我々の子孫のために幼子のために!万骨を枯らしてこの日本の、自由と人権と平和を守ったのだ。平和は命がけで守んなきゃならん!高い高い、代償を払わなければ!平和は守れるものではないのだ。

 諸君。ソ連が来たら、ソ連戦車を片っ端から、納沙布の水際で踏み潰せばよいのだ!日本を守るのに、アメリカの軍事同盟がある!自由世界の原爆ミサイルがある!何ぞ、ソ連の恫喝に恐れる必要があろうか。諸君。およそ人間にとって、愛国心の、尊さ!国のために死ぬことの、尊さ!それを!忘れている、現在の1億2000万の日本人は、既に!もう、独立国家を名乗るだけの価値のない、哀れな民族である。諸君。ついこの間の日露戦争に、我々の親たちがどんなに悲しい思いをして、そして、決然として国難にあたったか。

 ♪戦友
 ここは御国を何百里
 離れて遠き満州
 赤い夕陽に照らされて
 友は野末の石の下

 愛国詩人、西條八十*22はこういう詩を残している。

 旅人よ手綱を止めて仰ぎ見よ 夕日の丘にもくもくとそびえ立てり大陸の嗚呼忠霊塔
 大君のために進みて身を挺す異郷のだん 微笑みて鬼と化したる丈夫はここに眠れり
 この丘に野花を摘まば紅の血潮流れん この丘の朝日夕日に軍をさえ恐れとばずと

 妻子を捨てて、御国の難に、大陸戦線に!あるいは南方の海の果てに、天皇陛下万歳を叫び、大和民族の栄を祈って死んでった、この!我々の先祖の偉大なる魂に対して、我々が、今ぞ!答えなければ!この日本を守ることは、到底不可能である!


4.2(1983年)

 親愛なる全日本の同胞諸君。諸君は現在の平和に慣れ、もし、日本に戦乱あり、ソ連が北海道にでも侵略したならば、黙って降参すればそれでよい。そのような平和運動、そのような反、反核運動。そういう、日本が破滅してもいいのだというふうな、デタラメな平和運動が、北は北海道から、南は沖縄まで浸透してること、それを皆さんはあえて不審としない。そのような奇怪極まるところの平和運動を支持するものは誰か。すなわち、日本共産党であり、社会党であり公明党であり、日本の大新聞、読売朝日、毎日等々の大マスコミである。

 しかし諸君。諸君は今を去ること38年前!我が同胞が、戦争が終わった、平和が立ち返ったはずの満州において!およそ25万!シベリアにおいて10万の、我が同胞がソ連の!凶悪無惨な手によって虐殺されている、このことを、忘れさってしまっておる!諸君。広島長崎に原爆を落としたアメリカも良くない!だけれどもそれは戦争中のことだ!戦争や革命は、動乱は人を狂気にさせる。その間の出来事はまだ許せる!だけども!平和が立ち返って、戦争が終結した時点において!あの!満州シベリアの悲劇!あるいは、真岡郵便局*23が、あるいは北千島の、一帯が、ソ連軍の襲撃によって、戦の!犠牲を払ったということは!これは何であるか。

 諸君。共産主義というものが日本を支配したならば、日本は、破滅的な打撃を被る!およそ半分の日本人は殺され、半分はシベリアへ持ってかれる。この日本の!大和島根に、春が来れば桜が咲き、富士は、白雪に覆われて美しい姿を見せるだろうけども!1億2000万の大和民族は、この!日本列島から消えてなくなる!そういう悲惨な状態が来るんだ!

 諸君。我が、愛する日本は、建国以来3000年、この間、か、外国からの侵略受けることは十数度、ことに!700万年、700年前には、元軍10万が博多湾に殺到し、四千四百杯の、あの!元軍が、日本に降伏を強いた!しかし、当時の日本人が降伏したか?断じてこれに対して抵抗したではないか!鎌倉男児九州男児、六十余州の日本人が、奮い立って!ついに元軍は、玄界灘に壊滅したではないか。78年前もそうだ!この渺たる島国に、ロシアの大軍が!鴨緑江を越えて、満州から、朝鮮に侵入したとき、日本人は自衛のために立ち上がった。そして!奉天に!旅順に、日本は、万骨を枯らしてこれをかう、勝つことができた!はるばる、バルチック艦隊が日本に襲撃してきたときも、我が東郷艦隊は、これを日本海に撃滅した!

 諸君!日本は、勇気ある、民族である!この民族を守るためには、それは!大なる勇気と犠牲が必要だ。平和というものは!頭を下げて、ただ命乞いをすればそれで守れる、そんな甘いもんじゃないよ!そういうことを主張するのは!手つかずで日本列島を、この大こうごう、工業国を!ソビエトロシアに渡そうという!日本共産党社会党公明党の!謀略である!読売朝日毎日等々の、大新聞社の謀略である!私はこの人たちが、ソ連の犯罪性!あの、アフガニスタンに侵入して、残虐の限りを現在尽くしてる、この侵略主義犯罪を承知の上で、あえて己の利益のために、この!ソ連共産主義に迎合していると思えば!現在の平和運動の、その背後の!そのものがいかに恐ろしいか!

 私は、日本人の、この!性根の腐ったこと!およそ3000年の歴史の中で、これほど日本人が腐敗した時代はないでしょう。皆さん。日本の自由と人権を守らんとする皆さん。限りなく、日本を愛する皆さん!どうか!あんたがたは、平和と自由を守るためには、それ相当の正当なる代価を払ってもらいたい!勇敢なる、日本人の精神を取り戻し、平和と自由と人権を守るために、決然として立つだけの!日本人の性根を取り戻してもた、もらいたい。私は切に!切にそれを皆さんにお願いする次第です。

*1:社会党の政治家で、当時における同党の委員長(党代表、党首に相当)。いわゆる非武装中立論のイデオローグ的存在で自衛隊違憲と漸進的軍縮を主張した。「一票の格差違憲だとする判決が出ても選挙結果自体は合法だというのと同じで、自衛隊違憲的性格はあるが合法」とする違憲合法論で自衛隊の存在を必ずしも否定せず、社会主義・反資本主義的性格の強かった社民党を西欧型の社会民主主義政党へと方針転換させ、中道政党である公明党民社党との連携を模索した社公民路線を採るなど、現実主義者としての側面もあった。

*2:正式名称は日本社会党。右派の自民党が政権を、左派の社会党が野党第1党の地位を維持し続ける戦後の55年体制下で一定の党勢を維持した左派政党で、現在の社会民主党の前身。マルクス・レーニン主義を模範とした社会党左派と社会民主主義を目指した社会党右派の存在など、党内でも政治的立場には一定の広がりがあったが、おおむね革新・リベラル・護憲・平和主義・社会主義を志向した。

*3:ソ連アフガニスタン侵攻と抵抗を指したもの。共産主義政権の成立に対するムジャーヒディーンの蜂起として1978年に始まったアフガニスタン紛争は1979年にソ連が介入したことで泥沼化し、1989年にソ連が撤退するまで続いた。

*4:当時の創価学会会長で、現在は名誉会長。学会の政界進出を推し進め、創価学会を支持母体とする政党・公明党の結党に携わった。後述の「声明」とは創価学会日本共産党間の間で結ばれた1975年の創共協定を指していると思われるが、自民党の横槍と、肝心の公明党の反発によって協定はすぐに死文化した。

*5:月刊ペン事件を指すもの。同事件は、雑誌『月刊ペン』の隈部大蔵編集長を、同誌に掲載された池田大作の女性関係にまつわる記事が名誉棄損であるとして創価学会が1976年に刑事告訴して始まった。この事件は表現の自由と名誉棄損が争点になった事件としても有名で、最高裁が出した「私人の私生活を評論したものであっても、その私人の社会的活動の性質や、社会的影響力の大きさによっては評論が『公共の利害に関する事実』に当たり、名誉棄損とならない場合がある」という趣旨の判決が重要な判例となった。なお、隈部は記事の内容の真実性を立証できなかったので、最高裁からの差し戻し先の高裁で有罪判決を受けており、上告したものの、1987年に隈部が死亡したので審理は終了した。

*6:日蓮鎌倉時代の僧であり、日蓮宗/法華宗の開祖。法華教系の宗教団体である創価学会においても日蓮大聖人として信仰の対象になっている。一方、戦前からの右翼思想の潮流においても、国体思想と和合するように再解釈された日蓮は重要な意味を持っていた(いわゆる日蓮主義)。

*7:竹入義勝。当時の公明党中央執行委員会委員長(現在の公明党代表に相当)。竹入時代の公明党は70年代に革新色を強く打ち出し、同じく野党である社会党共産党などの野党各党との連携も試みていたが、最終的には民社党とともに自民党と協調する自公民路線に舵を切った。竹入は政界引退後に創価学会と対立し、党・学会を除名されている。

*8:ソ連の中距離弾道ミサイル、RSD-10のNATOコードネーム。高い性能を持つSS-20の配備はNATOに脅威を与え、結果的にNATOの対抗措置と核軍縮を促進し、1987年の米ソ間での中距離核戦力全廃条約(INF条約)締結に繋がった。SS-20自体は同条約締結後に廃棄された。

*9:中曾根康弘。当時の内閣総理大臣で、国鉄電電公社、専売会社(現在のJR、NTT、JT)の三大公社民営化などの実績がある。「三海峡封鎖」は宗谷・津軽対馬の三海峡を有事に封鎖してウラジオストクを根拠地とするソ連太平洋艦隊を日本海に閉じ込めるという構想、「不沈空母」は軍事拠点としての日本列島を指した比喩で、ともに1983年の訪米時に中曽根が発言した。

*10:ロナルド・レーガン。当時のアメリカ大統領。外交においては当初ソ連を「悪の帝国」と呼んで対ソ強硬姿勢を取り、SDI等で軍拡競争を仕掛け、国際的に反共主義を支援した。これらの施策は行き詰っていたソ連経済にさらなる負担を与えてソ連の態度軟化を引き出し、レーガンもこれに応じてゴルバチョフとの対話路線に転換、冷戦の終結に貢献したものと考えられている。一方、内政面では貿易赤字財政赤字双子の赤字に任期を通じて苦しめられた。貿易赤字の大部分を占めていたのは対日貿易赤字だったが、中曽根首相とは親密な関係を持ち、「ロン」「ヤス」と愛称で呼び合う仲だったとされている。

*11:アメリカの中距離弾道ミサイル。こちらもINF条約締結後に廃棄されている。

*12:順に日露戦争における旅順攻囲戦、奉天会戦日本海海戦を指す。

*13:日本教職員組合。教員・学校職員らによる労働組合の連合体で、55年体制下では社会党を支持した。当時に比べて組織率を大きく低下させたが、現在も教職員の労働組合連合体としては日本最大。設立されたのは1947年で、政治的には教育の民主化・民主主義教育の推進を掲げ、文部省と対立した。国旗掲揚・国歌斉唱への反対や歴史教科書問題などで右翼の反感を買ってもいる。

*14:太平洋戦争の戦中における日本側の呼称。

*15:当時の日本共産党委員長で、東京都第6区の衆議院議員。最後の日本共産党議長(2000-2006)でもある。現在は党付属社会科学研究所所長。筆まめで、著作は科学的社会主義を中心に100冊以上に及ぶ。

*16:日本共産党の書記長・委員長・議長を歴任した政治家。当時は議長。非合法政党時代からの党員で、共産党武装闘争路線の放棄、ソ連共産党中国共産党との対立(自主独立路線)にも関係している。「殺人前科一犯」というのは1933年の日本共産党スパイ査問事件を指したものだと思われる。宮本は同事件で無期懲役を科されたが、のちにGHQが指令した政治犯釈放命令の過程で釈放された。

*17:1960年に社会党右派の議員らが社会党を離党して結成した政党。結成当初は民主社会党を名乗っていたが、のちに民社党に改称した。政治的には中道左派で、社会主義を標榜する社民党とは異なり自由経済も取り入れた福祉国家建設を主張し、自衛隊日米安保も容認。反共主義を掲げて日本共産党とは激しく対立した。細川内閣の発足と55年体制の崩壊まで野党であり続けたが、公明党とともに自民党と協調することも珍しくはなかった(いわゆる自公民路線)。1994年に新進党に合流して解散。

*18:ノモンハン事件とも。1939年に満州国とモンゴルの間で起きた国境紛争が日本軍とソ連軍の直接衝突に発展した事件で、双方が数万人規模の兵力を投入した。戦車・火砲で勝るソ連軍の機械化部隊に日本軍は敗北したが、ソ連軍に相応の損害を与えてもいる。日本軍の対戦車戦闘では速射砲・野砲が中心的な役割を担ったが、対戦車地雷や火炎瓶による肉薄攻撃も同時に実行されており、深作の発言はこれを念頭においたものだと思われる。

*19:日本の新左翼党派である共産主義者同盟赤軍派の通称。赤軍派は非合法の武装闘争を中心に活動し、M作戦と称した銀行強盗、よど号ハイジャック事件など、多くの騒乱に関わった。同派から派生した日本赤軍(ハーグ事件、ダッカ事件パレスチナ銃乱射事件等を実行した国際テロ組織。現在も少なくない構成員が逃亡中で、国際手配されている)や連合赤軍(山岳ベース事件、あさま山荘事件などの凄惨なリンチ・殺人事件を起こしたテロ組織。日本赤軍ともども、日本における共産主義のイメージの不可逆的な破滅と学生運動新左翼運動の退潮に大いに貢献した)についても言及しているものだと思われる。

*20:北海道最東端の岬。数キロメートル先に現在もロシアが実効支配を続ける北方領土の一部、歯舞群島がある。

*21:現在の中国・北朝鮮国境を流れる河川。日露戦争においては、朝鮮半島北部に上陸し満州に北上しようとしていた日本軍と鴨緑江渡河を阻止すべく展開していたロシア軍の間で鴨緑江会戦が生じ、日本軍が勝利している。

*22:戦前・戦後を通じて活躍した詩人。戦時中に音楽部隊の一員として大陸戦線で従軍しており、軍歌・戦時歌謡の作詞にも多く携わった経歴がある。

*23:真岡郵便電信局事件を指している。当時日本領だった樺太の真岡に勤め、ソ連の対日侵攻以降も疎開していなかった女性電話交換手らが、8月20日ソ連軍上陸によって局内に孤立、青酸カリなどで集団自決した事件で、9名が死亡した。