二千三百五十五年

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【Stellaris】ロジスティック成長システムと軌道上居住地の相性の悪さについて【2022-06-12】

 Ver.3で追加されたロジスティック成長システムと、惑星許容量が小さい軌道上居住地、とくに軌道上居住地を中心として帝国を運営することになる「宇宙生まれ」の相性はすこぶる悪い。それを説明するために、本稿では、Stellaris現環境における人口成長システムを、自然な人口増を中心に説明していく。

 人口成長の計算式を説明する前に、まず「惑星許容量」というパラメータについて説明する。これは各入植地ごとに設定されている数値で、おおむね惑星が受け入れ可能な総人口に従うパラメータである。惑星許容量は以下の式によって算出される。

惑星許容量 = 区域の建造余地数×惑星種別係数+住居の過不足数+人口

惑星種別係数は種類ごとに固有で、テクノロジーや伝統によって増減したりはしない。

ガイア型・エキュメノポリス・集合意識惑星=6\\基本9種・リングワールド・遺物惑星=4\\死の惑星・機械惑星・軌道上居住地=3

 ここで理解しておくべきなのは、

  • 区域を建造すると区域の建造余地数が1減る。が、都市区域を建造した場合は惑星種別係数より多くの住居が提供されるので、惑星許容量は上昇する。対して、鉱業区域などを建設した場合は住居があまり供給されないので、惑星許容量は減少する。
  • 1popが消費する住居が1である限り、人口の増減によって惑星許容量が変化することは無い(住居が減ったぶん人口が増えて、惑星許容量は変化しない)。逆に、種族特性「社会的」の効果(popの住居使用量-10%)などで1popが消費する住居が1より少なくなっている場合は、人口増によって惑星許容量が上昇することがありうる。その逆もまた然り。
  • 住居系建造物によって住居を増やせば惑星許容量を増やすことができる。
  • 区域の建造余地数が大きい入植地≒サイズの大きい星ほど惑星許容量が大きくなりやすい。

 の4点である。上で説明したように、宅地を造成すれば惑星許容量は増えるし、農園や鉱山に区域を費やせば惑星許容量は減少する。「惑星許容量はおおむね惑星が受け入れ可能な総人口に従う」ということの意味が理解できただろうか。ともかく本題に移る。

 入植地におけるPOP成長の進捗は、基本値×補正+移民流出入分で算出される。この進捗が毎月蓄積されていき、一定値になるごとに新規POPが惑星に生まれる。なお、ロボットなどのPOP製造にはまた別のメカニズムが存在するが、それは本稿では割愛する。
 ここでは基本値について説明する。いつかのアップデートから、入植地におけるPOP成長の基本値は、以下の計算式で算出されるようになった。

G=3×0.125\times\left(P-\frac{P^2}{C}-1\right)=3×0.125\times\left(\frac{-1}{C}\left(P-\frac{C}{2}\right)^2+\frac{C-4}{4}\right)

 ここで、Gは人口成長の基本値、Pは現在の入植地の人口、Cは入植地の惑星許容量である。式から分かる通り、人口成長はP=\frac{C}{2}で最大値G=3×0.125×\frac{C-4}{4}を取る上向きの放物線を描く。また、\frac{dG}{dC}=0.375(\frac{P}{C})^2はゲーム中では必ず正になるので、惑星許容量の上昇は常に人口成長を加速させる方向にのみ作用することがわかる。
 ただし、人口成長の基本値は常に上の式に従うわけではなく、以下の諸条件によって制約される。

  1. 「ロジスティック成長の上限」によって、基本値の増加には上限が設けられる。この上限はゲーム開始時に設定することができ、デフォルトでは×1.5。この場合Gの上限は3×1.5=4.5になる。
  2. 人口が惑星許容量の半分より小さいとき、最低でも毎月3の進捗が保障される。
  3. 人口が惑星許容量の半分以上のときは、最低でも毎月0.3の進捗が保障される。
  4. POPが過密になると人口増加が止まるか、あるいは減少する。詳細な条件については略すが、少なくとも住居が不足していなければ過密にはなり得ない。

 
 以上の諸条件を元に、実際に惑星許容量が20、40、60、80の場合について人口成長の基本値Gの変化を計算すると以下のようになる。ただし、過密は起きていないものとする。

 POP成長が放物線のみに従うなら最初の成長は非常に小さいはずだが、上の条件2により人口が少ないうちは最低でも3の成長が保障されているのでそうならない。また、C=60、80については条件1により人口成長がG=4.5で頭打ちになっていることもわかる。どの場合についても、人口が増加すると成長はやがて急速に減少して最低値の0.3に落ち着くが、C=20の場合については、条件による補正が掛かる前の素の成長が小さいので条件2からの最低値保障を失った段階で成長が急減していることがわかる。

 起源「宇宙生まれ」の帝国の場合、これがダイレクトに問題になってくる。軌道上居住地の惑星許容量は惑星に比べて非常に小さく、特に拡張されていない初期型居住地の惑星許容量は住居を建て増さなければ高々20程度で、また未拡張の居住地には住居系建造物を建てることもできないので、だいたいの場合C=20のときのモデルのような形で人口が増加する。つまり、人口が惑星許容量の半分を越えただけで急速に成長速度が悪化するのだ。これは帝国の将来性に大きな影を落とす。

 この問題を解決するには二つの方法が考えられる。

 一つは自然な人口成長によらない方法で人口を増加させることで、具体的には、ロボットやクローンカプセルなどでのPOPの製造、移民の流入、侵略と占領によるPOP確保、略奪の軌道爆撃によるPOP略奪、銀河市場からの奴隷購入、難民の受け入れなどが考えられる。ただし、侵略、略奪、POP製造以外は人口増加の規模が小さい。戦争は安定性を欠き、大量の合金が必要になる≒研究が伸びないのでどのみち帝国の将来に影響を及ぼすし、POP製造はゲーム序盤では利用しづらい(クローンカプセルにはアセンションパーク「人工進化」が必要だし、ロボットが専門家職に就くためにはTier2の工学テクノロジー「ドロイド」が、統治者職に就くにはTier4の「人工生命体」が必要になる)。
 もう一つは、人口成長を目的としたPOP供給用の入植地を用意することだ。これは条件2による最低値保障をエクスプロイトし、強制移住や失業者の自動移住を利用して、常に人口が惑星許容量の半分を越えないようにした、POP供給用入植地を用意する方法だ(例えば、都市区域を一つだけ建造した入植地を用意すればよい。POPが成長するとすぐに職業枠が足りなくなるので失業者が出るが、失業したPOPは放っておけばそのうち空き職業がある入植地に自動で移住するので、POP供給用入植地の人口を増やさぬままに別の入植地にPOPを送り込み続けることができる。人口が少なくても過密になるとPOPの成長は止まるのである程度住居に余裕を持たせなければならないことに注意)。ただ、この場合にしても、そも入植地はそうやすやすと作成できるものではないこと(軌道上居住地建造にはデフォルトで1.5kの合金と150の影響力が必要になる。居住可能惑星を利用すればだいぶ安上がりになるが、そう大量に確保できるものでもない)、星間レベルでの失業者管理がプレイヤーの管理許容量を食うこと、入植地の増加が帝国規模を押し上げて伝統・テクノロジーの取得に悪影響を及ぼすことなどの問題はある。


参考
https://wikiwiki.jp/stellaris/POP
https://stellaris.paradoxwikis.com/Population